研究領域の現状 257
小 澤 岳 昌(准教授) (2005 年 4 月 1 日〜 2007 年 9 月 30 日)
*)
A -1) 専門領域:分析化学,生物物理
A -2) 研究課題:
a) タンパク質間相互作用の多色発光検出法に関する研究
b) リン酸化制御を受けるタンパク質間相互作用の発光イメージングに関する研究 c) 細胞内小分子の可視化検出法に関する研究
A -3) 研究活動の概略と主な成果
a) 不透明かつ自家蛍光の強い生物試料中において,多種類のタンパク質間相互作用を検出するためには,多色発光検 出法の開発が不可欠である。これまでに発光タンパク質(ルシフェラーゼ)の切断と再構成反応を利用して,生細 胞内タンパク質間相互作用のアッセイが可能な発光プローブを開発してきた。この研究を展開し,コメツキムシ由来 の赤色ルシフェラーゼ,同由来の緑色ルシフェラーゼ,ホタル由来の橙色ルシフェラーゼを利用して,1 細胞内で多 種類のタンパク質間相互作用を同時に可視化できる発光プローブを開発した。生細胞内での F K 506- bi ndi ng protei n
(F K BP)と F K BP-binding domain(F R B)の間の相互作用検出に応用し,薬剤存在下で可逆的に多色発光検出できる ことを実証した。
b) タンパク質間相互作用の多色発光検出法を応用して,リン酸化制御を受けるタンパク質間相互作用の発光イメージ ング法を確立した。マウス個体および動物細胞を用いて,リン酸化シグナルによって調節される B ad と 14-3-3 タン パク質間,および B ad と B cl2 タンパク質間相互作用を異なる発光波長により可視化することに成功した。また,ツ メガエル卵を用いた実験系において,骨形成因子(B M P)情報伝達系のリン酸化によって誘導される S mad1–S mad4 間相互作用をリアルタイムに可視化検出することに成功した。
c) 植物個体やツメガエル卵で機能する細胞内情報伝達物質 cyclic guanosine monophosphate(cGMP)を,高感度かつ可 逆的に可視化検出できる発光プローブを開発した。cG M P プローブを導入した形質転換シロイヌナズナ個体を用い た解析では,塩ストレス/浸透圧ストレスなどの外界環境変化に応答して,細胞内 cG M P 濃度の上昇が起こること を明らかにした。またツメガエル卵の発生過程における解析では,脳,心臓において cG M P 産生が観測された。さ らに神経胚の神経管近傍において有意な発光上昇が検出された。以上結果から,生物個体内における cG M P の産生 を時空間解析する優れたプローブとなることを実証した。
B -3) 総説,著書
小澤岳昌 , 「タンパク質再構成法を用いた細胞内生体分子の解析法」, BIOINDUSTRY 25, 27–36 (2008).
菅野 憲,小澤岳昌 , 「レポータータンパク質の再構成法を利用した生体分子イメージング」, 生体の科学 59, 66–72 (2008). 小澤岳昌 , 「R NA イメージング法」, 実験医学増刊 26, 59–67 (2008).
小澤岳昌 , 「クラゲから生まれた GF P 革命」, 現代化学 453, 25–28 (2008).
小澤岳昌 , 「可視化プローブによる時空間情報を損なわないミトコンドリア R N A の動態観察」, 「ナノイメージング」, エヌ・ ティー・エス, pp. 199–206 (2008).
小澤岳昌 , 「生理機能を可視化する新たな分子プローブ」「ナノ, メディシン」, 宇理須恒雄編 , オーム社 , pp. 13–24 (2008).
258 研究領域の現状 B -4) 招待講演
小澤岳昌 , 「生きた細胞ではたらく生体分子を観る技術」, 第2回横幹連合総合シンポジウム, 東京 , 2008年 12月.
T. OZAWA, “Fluorescence and bioluminescence biomolecular Imaging: From single cells to living subjects,” 11th International Symposium of Spectroscopical Society of Japan, Sendai, 2008年11月.
小澤岳昌 , 「生体分子の細胞内動態を解析する分子科学」, 日本コンピューター外科学会 , 東京 , 2008年 10月. 小澤岳昌 , 「タンパク質再構成法を用いた生体分子イメージング」, 薬物動態学会23回年会 , 熊本 , 2008年 10月.
T. OZAWA, “Optical Imaging of Biomolecules in Living Cells and Animals Using Split-Reporter Reconstitution Analysis,”
1st Workshop in the Advanced Light Microscopy (DKFZ), Heidelberg (Germany), 2008年10月.
T. OZAWA, “Visualization of Biomolecules Using Split Reporter Reconstitution; From a Single Cell to Living Animals,”
International Symposium of Institute for Innovative Cancer Research, Seoul (Korea), 2008年10月.
T. OZAWA, “Optical Imaging of Biomolecules in Living Cells and Animals Using Split-Reporter Reconstitution Analyses,” 3rd International Workshop on Approaches to Single Cell Analysis, Zurich (Switzerland), 2008年9月.
小澤岳昌 , 「生理機能を可視化するイメージング技術の原理とモデル生物への応用」, 第1回東工大バイオ計測研究会 , 神奈 川, 2008年 8月.
小澤岳昌 , 「生体分子イメージングを可能にする光分子プローブの開発」, 第5回 A MO 討論会 , 東京 , 2008年 6月.
T. OZAWA, “Visualization of Biomolecules in Living Cells Using Split-reporter Reconstitution Analysis,” NIPS-JST International Workshop [Advanced Nonlinear Imaging & Fluorescence-based Biosensors], Aichi, 2008年4月.
小澤岳昌 , 「生細胞内の生理機能を可視化するタンパク質再構成法」, 日本薬学会第128年会 , 横浜 , 2008年 3月. 小澤岳昌 , 「生体分子の機能解明を目指すイメージング法の開発」, 第88回日本化学会春季年会 , 東京 , 2008年 3月. 小澤岳昌 , 「新規光プローブが拓く生体分子の時空間解析法」, 第8回分析化学会関東支部懇話会 , 東京 , 2008年 3月. 小澤岳昌 , 「新規光プローブが拓く生体分子イメージング」, 第2回北海道大学医学研究科連携研究センターシンポジウム, 札 幌 , 2008年 2月.
B -5) 特許出願
特願 2008-164927, 「cyclicGMP 検出方法」, 小澤岳昌,竹内雅宜,三浦研二 , 2008年 .
特願 2008-000789, 「タンパク質間相互作用の検出法」, 小澤岳昌,ムハンマド アワイス,三浦研二 , 2008年 . PC T 出願 PC T /J P2008/058669, 「プロテアーゼ活性化インジケーター」, 梅澤喜夫,小澤岳昌,管野憲 , 2008年 .
B -6) 受賞,表彰
小澤岳昌 , 日本化学会進歩賞 (2004).
小澤岳昌 , 文部科学大臣表彰若手科学者賞 (2005).
B -7) 学会および社会的活動 学会の組織委員等
日本化学会春季年回実行委員(2008-) 日本化学会春季年回講演企画委員 (2007– ). フロンティア生命化学研究会運営委員 (2008– ).
研究領域の現状 259 日米先端工学シンポジウム実行委員 (2008).
東京コンファレンス実行委員 (2004–2006). 日本化学会年会プログラム編成委員 (2004–2005). 学会誌編集委員
日本化学会欧文誌編集委員 (2007– ). 日本分析化学会「ぶんせき」編集委員 (2007– ). その他
基礎生物学研究所バイオイメージングアドバイザリー委員 (2006– ).
B -10) 競争的資金
奨励研究 (A ), 「インシュリン情報伝達系に基づく生理活性物質の化学選択性評価法の創製」, 小澤岳昌 (1999年 –2001年 ). 若手研究 (A ), 「プロテインスプライシング反応を利用した機能性プローブ分子の開発と応用」, 小澤岳昌 (2003年 –2006年 ). 科学技術振興機構さきがけ研究 , 「タンパク質のオルガネラ移行と遺伝子発現の非侵襲的時空間解析法の確立」, 小澤岳昌 (2003年 –2006年 ).
基盤研究 (B), 「生体内情報伝達分子の可視化検出法に関する研究」, 小澤岳昌 (2006年 –2008年 ). 特定領域研究 , 「タンパク質立体構造情報に基づく生物発光プローブの開発」, 小澤岳昌 (2006–2008年 ).
新エネルギー・産業技術総合開発機構・産業技術研究助成事業 , 「低侵襲的生体分子イメージングに向けた生物発光プロー ブの開発」, 小澤岳昌 (2006年 –2008年 ).
科学技術振興機構さきがけ研究 , 「不透明な生体内における細胞内小分子の可視化と光制御法の開発」, 小澤岳昌 (2007年 – 2010 年 ).
萌芽研究 , 「R NA機能の光制御法に関する研究」, 小澤岳昌 (2008年 –2009年 ).
C ) 研究活動の課題と展望
蛍光・発光タンパク質の切断と再連結を利用したタンパク質再構成法は,我々が世界に先駆けて創出した方法であり,未知 の生命現象を解明するための新たな基盤技術として多様な応用可能性を有している。従来の蛍光イメージングでは困難で あった生物個体内の分子機能を可視化するために,今後はルシフェラーゼの発光を利用した新たなイメージング技術を精力 的に開発する。さらに生体分子の対象を広げ展開するとともに,ルシフェラーゼイメージングの定量化と精度の向上,また空 間解像度の改善が重要課題である。蛍光・発光同時観察のための顕微鏡システムを開発し,動植物組織・個体内に局在す る生体分子の機能の可視化から,生命現象の新たな発見を目指す。
*)2007 年 10 月 1 日東京大学大学院理学系研究科教授,分子科学研究所教授兼任